とある中古腕時計店のとあるお話し。

これは先日久しぶりに、とある面白い腕時計店に足を運んだ時のお話しです。

「あれ? 時計ってもう売ってらっしゃらないんですか??」

「ああ、うちの親父死んでしまいましてね」

「あ、、、そうなんですか。それはそれは御愁傷様です。実は私よく、、、」

時はここから約三年前に遡ります。そして下記の内容はその時に日記程度に僕が書いたものです。


先日某所のとある老舗アンティークショップで見つけたOMEGA オメガ Seamaster 300のアンティークもの(店主曰く)。

image
image

しかーーーし!これは明らかに違う気がする。まずハンド(針)が違う。こんなベンツ針の個体はググってもでてこない。そしてベゼルも違う。これはおそらくSEIKOのベゼルをはめてある。店主よ、本気ですかい?

ちなみに本物はこちら↓

image

チュードル サブマリーナ Ref.7928もある。。。。どうなんだろう?ダイアルが新しすぎるような気がする。て言うかこの色は存在するのか??本物だったら偉い価値と言うかなんでも鑑定団レベルだと思うけど売値(店主がさらっと38万円だねーと言う)は価値から考えると相当安い、が偽物ならしゃれにならん金額。

image

これも有名なチュードル サブマリーナ通称『イカサブ』これならなんとなーく行けそうな気がするが(文字盤の劣化具合など)、いかんせんこの店には贋作がおおすぎてこれが本物かどうか信用ができないと言うのが本音。

こちらも本物はこちら↓

image

ここいらの人気のないシリーズであれば逆に偽物はあまり作られないだろうが金額が楽天とかにもあるものとさほど変わらない(10万代)。ここの店主は思うに、実はかなりの商売人なのかもしれない。人気の物は他ではない破格の値段をだし贋作臭プンプンでそれ以外の物はしっかりとそれなりの市場価格にしている。とにもかくにもまあ行くだけなら面白い店。本気で買いたいのならしっかりとした目利きの出来る人を連れてかないとまあ怖くて怖くて手が出せません。

本物↓


そしてここからは、また先日のお話しです。

「実は私良くこちらのお店に来ておりまして、お父様には私のたわいもないお話しに良くお付き合いしていただいておりました。」 

息子さん「ああ、そうですかそれはどうもどうも」 

「あれだけあった時計達はどうされたんですか?」

息子さん「今兄弟達と財産分与で色々と。。。」 

「ああ、そうですか。デイトナのポールニューマンとか本物だったらものすごい値段ですよねぇ。」 

息子さん「ああ、あれですか。実はあれはパーツパーツはどうも本物らしいんですが何個か偽物パーツも混ざっててややこしいらしいんです。。。でもサブマリーナとかエクスプローラーとかはすぐに買い取ってもらいました。」 

「ああ、全部売ってしまうんですね。本物とかはご自分達で所有されないんですか? 質屋に安く買い取られて損しないですか?」

息子さん「良いんですよ、私も弟達も腕時計どころかロレックスすら良く知らないんですよ。それに相続や税金のこと考えると、金に変えないと話がまとまらないんです。」

「では、デイトナ以外は本物だったんですか?」 

息子さん「いやー、怪しい部分とかあったらしいんですが、中国人達が買うから良いんですってw」 

「ああそうなんですねw、ああ、でもデイトジャストなんかは本物だったんじゃないです?」 

息子さん「いやー、それが買い取ってくれなかったんですよ。何が偽物なのかって教えてくれないんですよねぇ、でも親戚たちが欲しいって言うので譲る予定です。ただ、相続税は払ってくれって言ってるんですよw」 

「ああ、質屋が買い取ってくれないってことは、偽物ってことですね」 

息子さん「。。。。。」 

「そういえば、ご主人どうやって時計仕入れてたんですか?」 

息子さん「はは、韓国、ロシア、フィリピンですよ。実は親父、私を何度か韓国の仕入れ先に連れてったことがあるんですけど、私にはあんな世界、無理です無理です。絶対に無理です」

「なんでです? 面白そうじゃないですかw」 

息子さん「いやですよ、あんなヤクザな世界。カタギじゃできないですよ、怖くて。 うちの親父はもともと時計なんて興味なかったんですけど、いつの間にか商売してたんです。いや、息子の自分が言うのもなんですが、きっと女が居たんだと思います。だって向こうに家や車もあったんです。そうやって生活しているうちに現地の人間と仲良くなって、もともと商売人だったので時計を韓国で安く仕入れれると分かり入り込んで行ったんだと思います。」

「そうなんですねー、凄いですね!親父さんw」

息子さん「凄くなんてないですよ! 私に良く言ってたのは、商売人は人を騙してなんぼだって言うんです。自分の店の仕入れの支払いだってわざと滞納するんです。そうすれば店に業者は頻繁に来るじゃないですか。金の切れ目は縁の切れ目だってね。そういう親父でした。あ、だからうちの店のものは全て本物じゃないと思ってもらったほうが良いです。今は販売してませんが、相続が整理ついたら年末までに閉店セールするつもりです。でも本物が欲しかったら買わないでくださいね。」

「はは、そうですかぁ、面白い親父さんですね。でもオールドセイコーは今二束三文で売ってしまうのは勿体無いですよ。あそこらへんは本物だと思いますし今海外でもかなり人気ですよ。」

息子さん「諏訪精工舎と昔から親父は関わりがあったんで、確かにSeikoらへんは本物だと思いますが、残してもしょうがないんです! 税金だけがかかるので処分してお金にして兄弟で分けてしまわないと。でも、もう時期100年経つらしいんですよ曽祖父がこの店創業して。。。。私が若ければねぇ」

「韓国行きましょw」

息子さん「いやですよw」

ローカルの中古時計屋でまさかの掘り出し物なんて現在の情報社会であるわけがないと思う反面、昭和の時代に生き抜いた一人の商人の生き様とその商人の金に対する貪欲さに驚きながら、インバウンドの観光客で賑わう城下町を歩き秋の雲空を見上げ、お土産のプリン片手に息子の喜ぶ姿を思い浮かべ家路につく。

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

Twitter で